「世栄」
- アリャサ ここに過ぎにしその物語り ドウジャイナ そのもの語り
- アリャサ 六十四州は国広けれど ドウジャイナ 国広けれど
- アリャサ 恋と無情は不変なものよ ドウジャイナ 不変なものよ
- アリャサ 明治二十一旧三月の ドウジャイナ 旧三月の
- アリャサ 中の五日に西洞村に ドウジャイナ 西洞村に
- アリャサ さても哀れな心中の話 ドウジャイナ 心中の話
- アリャサ 村でなにがし徳左衛門の ドウジャイナ 徳左衛門の
- アリャサ 一人娘にお梅とありて ドウジャイナ お梅とありて
- アリャサ 小野小町かてるての姫か ドウジャイナ てるての姫か
- アリャサ 顔は桜でその肌雪よ ドウジャイナ その肌雪よ
- アリャサ 近所隣の若い衆達が ドウジャイナ 若い衆達が
- アリャサ お梅お梅と恋する中に ドウジャイナ 恋する中に
- アリャサ 大家伊平の一人の息子 ドウジャイナ 一人の息子
- アリャサ 年は二十五で寅造とありて ドウジャイナ 寅造とありて
- アリャサ 近いころまで兵隊務め ドウジャイナ 兵隊務め
- アリャサ 村に帰りてお梅を見初め ドウジャイナ お梅を見初め
- アリャサ そこで二人は契りを結び ドウジャイナ 契りを結び
- アリャサ いとし恋しとその日を送る ドウジャイナ その日を送る
- アリャサ それはよけれど踊り子様よ ドウジャイナ 踊り子様よ
- アリャサ 花の盛りも過ぎにし頃に ドウジャイナ 過ぎにし頃に
- アリャサ 大家伊兵の嫁取り話 ドウジャイナ 嫁取り話
- アリャサ 村の庄屋の重左衛門の ドウジャイナ 重左衛門の
- アリャサ 一人娘におたのとありて ドウジャイナ おたのとありて
- アリャサ 年が二十二で利発な者よ ドウジャイナ 利発な者よ
- アリャサ それが良かろと相談決まり ドウジャイナ 相談決まり
- アリャサ 伯父さ頼んで寅造に意見 ドウジャイナ 寅造に意見
- アリャサ そこで寅造は伯父さに意見 ドウジャイナ 伯父さに意見
- アリャサ 私も今年は二十五の厄よ ドウジャイナ 二十五の厄よ
- アリャサ 嫌でござるといろいろ言えど ドウジャイナ いろいろ言えど
- アリャサ 伯父さ意見が厳しき故に ドウジャイナ 厳しき故に
- アリャサ はいと答えてその場を去りて ドウジャイナ その場を去りて
- アリャサ そこで伯父さは重左衛へ行きて ドウジャイナ 重左衛へ行きて
- アリャサ ここの嫁を伊平が方へ ドウジャイナ 伊平が方へ
- アリャサ 嫁に下され仲人いたす ドウジャイナ 仲人いたす
- アリャサ そこで重佐の二親達も ドウジャイナ 二親達も
- アリャサ 何かしゅうかいお任せいたす ドウジャイナ お任せいたす
- アリャサ よろしゅう頼むと挨拶いたす ドウジャイナ 挨拶いたす
- アリャサ そこで祝儀の日取りも決まり ドウジャイナ 日取りも決まり
- アリャサ 日々に近づく祝儀の日取り ドウジャイナ 祝儀の日取り
- アリャサ そこで寅造は思案に暮れて ドウジャイナ 思案に暮れて
- アリャサ お梅方へとその夜に忍ぶ ドウジャイナ その夜に忍ぶ
- アリャサ いとしお梅は寅造に向かい ドウジャイナ 寅造に向かい
- アリャサ わしを見捨てて他から嫁を ドウジャイナ 他から嫁を
- アリャサ 貰うお前はそれでもよいが ドウジャイナ それでもよいが
- アリャサ わしのお腹は早や五ヶ月よ ドウジャイナ 早や五ヶ月よ
- アリャサ とてもこの身で生きてはおれぬ ドウジャイナ 生きてはおれぬ
- アリャサ わしが死んだらこう花立てて ドウジャイナ こう花たてて
- アリャサ くる日命日回向を頼む ドウジャイナ 回向を頼む
- アリャサ 言えばお梅は寅造に向かい ドウジャイナ 寅造に向かい
- アリャサ お梅よう聞け私じゃがとても ドウジャイナ 私じゃがとても
- アリャサ 好いて好んで貰うでないが ドウジャイナ 貰うでないが
- アリャサ 義理と義理とに責め立てられて ドウジャイナ 責め立てられて
- アリャサ 死なば諸共心中をしようと ドウジャイナ 心中をしようと
- アリャサ 言えばお梅も顔振り上げて ドウジャイナ 顔振り上げて
- アリャサ 嬉しゅうござるよお前のお手に ドウジャイナ お前のお手に
- アリャサ かけておくれりゃわしゃ本望と ドウジャイナ わしゃ本望と
- アリャサ そこで二人は忍んで出でて ドウジャイナ 忍んで出でて
- アリャサ ここよかしこと探する内に ドウジャイナ 探する内に
- アリャサ 夜明け近づく人目にさわる ドウジャイナ 人目にさわる
- アリャサ ここが二人の最期の場所と ドウジャイナ 最期の場所と
- アリャサ 袂からして酒取り出して ドウジャイナ 酒取り出して
- アリャサ 娑婆の別れの盃いたし ドウジャイナ 盃いたし
- アリャサ お梅覚悟はよいかと言えば ドウジャイナ よいかと言えば
- アリャサ さすがお梅は片肌脱ぎて ドウジャイナ 片肌脱ぎて
- アリャサ 首を差し出す寅造が前に ドウジャイナ 寅造が前に
- アリャサ 可愛いお梅の首切り落とし ドウジャイナ 首切り落とし
- アリャサ すぐに我が身も自害をいたす ドウジャイナ 自害をいたす
- アリャサ 最早明六つ烏の声は ドウジャイナ 烏の声は
- アリャサ 可愛い可愛いと去り泣き渡る ドウジャイナ 去り泣き渡る
- アリャサ さても哀れな心中話 ドウジャイナ 心中話
- アリャサ 後の世までもその名を残す ドウジャイナ その名を残す
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