「春駒」
- 郡上は馬どこあの磨墨の 名馬出したも気良の里
- 私ゃ郡上の山奥育ち 主と馬曳く糸も引く
- 金の弩標は馬術の誉れ 江戸じゃ赤鞘郡上藩
- 駒は売られていななき交わす 土用七日の毛付市
- なんと若い衆よたのみがござる 今宵一夜は夜明けまで
- 馬は三歳馬方はたち 着けたつづらの品のよさ
- 小駄良才兵衛と朝顔の花 今日もさけさけ明日もさけ
- 日照りしたとて乙姫様の 滝の白糸切れはせぬ
- 村じゃ一番お庄屋様の 小町娘の器量のよさ
- 踊り子が来た大門さきへ 朱子の帯して浴衣着て
- 二十五日は天神祭りござれ 小瀬子の茶屋で待つ
- 東殿山からのぞいた月を 映す鏡は吉田川
- 様は三夜の三日月様よ 宵にチラリと見たばかり
- 親のない子に髪結てやれば 親がよろこぶ極楽で
- 様が様なら私じゃとても かわる私じゃないわいな
- 親の意見なすびの花は 千に一つの無駄がない
- 川の瀬でさえ七瀬も八瀬も 思いきる瀬もきらぬ瀬も
- はやす太鼓が瀬音に響きゃ 鮎も浮かれて踊りだす
- 揃た揃たよ踊り子が揃た 二番すぐりの麻の様に
- 村じゃ一番お庄屋様の 小町娘の器量のよさ
- 郡上の八幡よい木がござる 鏡見たよな水もある
- 踊り助平が今来たわいな わしも仲間にしておくれ
- おさば押せ押せ下関までも おさば港が近くなる
- 踊り踊って嫁の口なけリや 一生後家でもかまやせぬ
- 音頭取リめが橋から落ちて 橋の下でも音頭とる
- 踊り上手でしんしょ持ち ようて赤いたすきの切れるまで
- 遠く離れて咲く花待てば 散リはせぬかと気はもみじ
- 思うことさえ言われぬ口で 嘘がつかれるはずがない
- 島田娘と白地の浴衣 ちよっとしたまに色がつく
- からむ朝顔ふり切りかねて 身をばまかせた垣の竹
- 肩をたたくは孝行息子 すねをかじるはどら息子
- 声はすれども姿は見えぬ 様は草場のきリぎりす
- 様が草場のきりぎリすなら 私しゃ野山のほととぎす
- いやな雪じゃとはね返しても 義理が積れば折れる竹
- 花は咲いてもわしゃ山吹きの ほんに実になる人はない
- 愛宕山から春風吹けば 花の郡上はちらちらと
- 今日は日がよて朝からようて 思う殿まに二度出会うた
- 人は一代名は末代と およしゃお城の人柱
- 音頭取りめが取りくたびれて さいた刀を杖につく
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