「やっちく」凌霜隊伝 上の巻
- これは過ぎにし其の物語り 聞くも哀れな凌霜隊よ
- 時は慶応四年の春よ 日本国中二つに割れて
- 勤王・佐幕の嵐が襲う 所は濃州郡上の藩で
- 領地四万八千石の 青山大膳幸宣公は
- 年端もゆかない御歳なるが これを助けるお国の家老
- 鈴木兵左衛門評議をかさね 青山藩家の安泰ねがい
- 先ずは朝廷へ恭順いたし 残る不安を使者差し立てて
- お江戸家老の朝比奈様へ 話きまりて国元からは
- 選び抜かれし十五の藩士 文武すぐれて血気の盛り
- お家の大事と幕府の恩義 報いられるは一筋なるぞ
- 脱走人との汚名におじず 弥生二十日の朝早きうち
- 中野村なる鎮守の森で 心ちかいて中津の宿へ
- 使命おびたる馬急がせて 塩尻まわりて中仙道を
- 江戸は本所でその名も高い 船宿菊屋でわらじを解けば
- 義挙に加わる名を読み上げて 隊長朝比奈茂吉と決まり
- 副長坂田の林左衛門と 会津派遣使速水の小三郎
- その名郡上藩凌霜隊で 総勢そろえて四十と五人
- 祝う御神酒で心をかため
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