「やっちく」凌霜隊伝 中の巻
- 一夜明くれば四月の十日 夜更け計りて江戸川のぼり
- 下総まわりで会津へ向かう ざんぎり頭に鉢巻しめて
- 陣股引にて筒袖すがた 日光街道の小山の宿で
- 草風隊との銃弾しきり 敵がばたばた倒れる中を
- なおも突き来る一団めがけ 凌霜・貫義の隊士がいどみ
- 激しくつづきし白兵戦も 味方にあがりし勝どきの声
- 泥にまみれて砲煙くぐり 宇都の宮から今市あたり
- 大内峠の激戦越えて 九月六日に鶴が城へ入る
- 西出丸では防塁築き 白虎隊士と励まし合いて
- 共に陣所の配備を固め かかる折しも西軍側に
- 城は囲まれ砲弾ひびき 東軍の不利いや増すばかり
- かくて篭城やむなき次第 あとに残りし三十六士
- 敵の目指せる総攻撃に 昼夜別なく火の手に追われ
- 西出丸さえ早や焼け落ちる さればと隊士は陣所を変わり
- 砲声とどろくそのただ中を 目に物見せんと出撃いたす
- されど奥羽の連盟くずれ 情勢やむなき降伏となる
- されば隊士も悄然として 無念の感涙やる方もなく
- 猪苗代へと謹慎される
©1997 - gujodotcom