「やっちく」凌霜隊伝 下の巻
- 捕えられたる身に雪つもり 深手の隊士を六人残し
- 大垣藩士の護衛を受けて 腰は丸腰汚れたみなり
- 郡山から宇都宮すぎて 歩きつづけて千住にと着く
- 郡上藩士の冷たい仕打ち 伝馬船へと早や押し込まれ
- 品川沖から千石船で 遠州灘でも災難にあいて
- 命からがら鳥羽へと到る 岐阜の美江寺を出てから先は
- 不浄縄にていましめられて 囚人駕篭へと乗せられまして
- 腹も煮えくる非道の仕打ち 難儀かさねて中野へ帰る
- そこで又もや揚屋入りと 科人なみのョきびしい責め苦
- 一同観念したことなれど 身内の面会許されもせず
- 便り差し止め世を断つ思い 赤谷あたりの揚屋ぐらし
- 風も通らず光も差さず 病気になる者日に増すばかり
- これを見かねて近郷の僧侶 慈恩寺様へと集まり来たり
- 藩主に嘆願長敬寺様へ 移り変わりてひと息いれる
- 明治二年の秋ともなれば 戦死隊員の法要も済まし
- その夜奇しくも藩庁からは 自宅謹慎の御触れが回る
- 手に手を取りてョ喜び勇み 留守居の家族も喜び明かす
- さても哀れな凌霜隊士 あゝ凌霜隊その魂は
- 郡上の里にて生きつづけたり 共に伝えんその真心を
- 永久に伝えんその真心を
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