第151話
「小川よもやま」
- わしのオジイの久七という人はな、文化の終りごろ、小谷から分家したもんらしいな。久七という人はな、オッサマやけんど、人に憎まれんたちで、よっころ字も上手やったらしいな・・・
第152話
「製糸のあったころ」
- わしらが尋常科へ出るころはな、まんだ手引きってやつがはやって、どこの家でも竹のシンにかま土をつけた七輪があって糸を引いたもんやった。浅谷の大坪銀造さんとこの・・・
第153話
「小川の蚕飼」
- 蚕も在来っててな、昔、蝶々やなんでもまぜてな、アヤカリ繭を飼った時分は、ええかげんなもんやったな。うん。わるさに手前に産ませたこともあったけんど、そんなもんは・・・
第154話
「糸と山」
- あそこに掛けてある時計はな、明治十二年か十三年やと思うがな、二間手の小池与市という人が、横浜へ糸売りに行ってな、その帰りに負んどざったもんらしいな・・・
第155話
「組合と役場での十一年」
- わしが村長に頼まれたのは、どういうことやったというと、その時分、つまり昭和の初めごろの村の等級はな、七か村が寄っただけで、まんだ一村等級ではなかったん。そういう意味では・・・
第156話
「三島野戦重歩兵連隊」
- 夜学へは、わしら小学校出てから六年ぐらい出たわいな。農繁期と夏休みは休んで、あとは、月•水•金と出て、一晩に一時間ぐらいでしたな。国語に算術にそれから今の社会科のような・・・
第157話
「二間手の共有林」
- 家の親仁も五十五で、まんだ若うて死んだんやったが、死ぬが死ぬまで、「人間てものは、信用が第一やで、おみに言って聞かせとくが、最後やで。人から金を借りたら、返せる確信の日を決めて・・・
第158話
「二間手の開田始末」
- 二間手は田んぼが少ないし、米が半年ぐらいしかなかったんな。まったく。そんで、置田市まやなんといろいろ相談して、なんとかしてと思ってな。土地改良には助成があるらしいが、どうかして・・・
第159話
「森林組合製材所」
- 終戦前後は、森林組合もえらい盛りでな。ちいと材を買って製品にして売ろうということで、製材を思い立ったもんらしいな。初め、西脇富造さと井上孫一つぁと二人で・・・
第160話
「京参り」
- 生まれは小久須見やけど、石神さんの前にあった大谷学校へ、わしも出た。棚井の学校は、それからずっと後にできたんやで。大谷の学校へわしは四年も来なんだ・・・
第161話
「青年会の思い出」
- 大正六年に高等科を卒業して、その年に、わしは、村の青年会の評議員に選ばれましてな。本会の評議員は、各区ー名、会長のメガネで指名されたわけです。当時会長は・・・
第162話
「荷車引き」
- わしの小学校四年ぐらいの時分、考古展覧会というものを松野校長さんがたくまれましてな。消書や絵や綴方や手芸品やなんも並べて、学校の展覧会の時にやられたんです・・・
第163話
「堂宮の木出し」
- わしの小学校四年ぐらいの時分、考古展覧会というものを松野校長さんがたくまれましてな。消書や絵や綴方や手芸品やなんも並べて、学校の展覧会の時にやられたんです・・・
第164話
「懐かしい人々」
- その面影は、はっきり浮かんでこないけれども、印象に残っている西山のカンさは、一見、どこでも見かけるような、ごく小柄な男で、年の頃もはっきりしなかった・・・
第165話
「思い出すこと」
- わしらが大谷から布平の学校へ移って、しばらくした時ご真影の奉戴式があってな。そのお迎えに大谷の外れまでついていったわいな。ほしたら、久富先生が人力に・・・
第166話
「二間手の祭り」
- この祭りの元は神路で、大谷の衆が習わしたということを聞いとる。そんでわしらんとこの師匠は大谷や。いつということはさっぱりわからんな。百五十年も・・・
第167話
「二間手の紺屋」
- この村の常楽寺門徒の原は、三十軒もあらすと思うがな。みんな、越前の桔梗が原から、徳永の恩善寺へ来て、あすこを笠脱ぎ場にして畑佐へ移ってきた、原庄次郎の・・・
第168話
「さぶいおばあとその孫たち」
- おばあは、どこで習わした知らんが読み書き、算盤、達者なもんやったで。天保の生まれで手紙やなん、さっささっさと書くなんてもんは少けなかったでな。おばあは・・・
第169話
「善左衛門での六十年」その一
- わたしの実家は、小駄良の印雀の森清です。十八の年の二月にな、来たんです。下駄ばきでカラカラと来たんです。荷持ちさが両掛を担いでな。その時、ここは・・・
第170話
「善左衛門での六十年」その二
- 善左衛門の身上も半分になってまって、それからぐずぐずしょおってな。どうも思うようにないし、いっそのこと満州へ行こまいかってて、家内中開拓団で満州へ・・・
第171話
「乞食参り」
- わしはな、今年八十や。十二の年にな、同い年のおすえさと二人で、お伊勢様へ参ったんや。道々乞食して参ったんや。菅笠をかぶって、縞の着物に、筒の・・・
第172話
「平三郎医者」その一
- わしんとこは、末武稔さんとこの新家やいな。初代の愛次郎という人が買い越しではいんないた家を、愛二が建て直いてくれたんやがな。古い家は、なんでも東濃の・・・
第173話
「平三郎医者」その二
- 二月の二日、平三郎さの葬式やった。そうやけども、だーれも触れまやすってこたないけど、平三郎さが死なしたいなってやつで、みーんな、小川中の人がな・・・
第174話
「偉い人」
- 世界には世界の偉い人があるとおんなじに、わしらの村の小さい部落にも、それなりの偉い人というものはあったな。それで、きょうは、部落の山に関係して努力され・・・
第175話
「助左衛門の三代」
- わしらのじっさまの金四郎という人は、これはきつかった人でな。九十四やったがな、死なしたに。ツキイのとこへ立っても、指一本か二本でカモイヘいっぱいやった・・・
第176話
「川向かいの家が見える」
- 支那事変の始まった時、役場へはいってな。十二、三年おったですがな。終戦して、いちばんえらいどさくさのうち役場で使ってもらって、大体おさまった時分に・・・
第177話
「西気良今昔」
- 関上の奥の淵で、ガワロウが人を取ったというような話は、こどもん時聞いたこたあるけんど、こどもが川へ行くでおどさしたぐらいの話やわいな。そうやが・・・
第178話
「鍛冶どん」その一
- 鍛冶か大工か、どっちが格が上かってことで、昔、論判が起きたって。その時、最後に、聖徳太子がフイゴを大阪に降らいて、鍛冶がそれで大工の道具をこさいて・・・
第179話
「鍛冶どん」その二
- ジッサは、朝はとても早かった。夕方仕事済ますと魚釣りよな。百姓やっとらんでな。ジッサは、鍛冶と魚釣りでこども八人ひとねあげさしたんやんな。魚取り道具は・・・
第180話
「部落有林整理の顛末」その一
- 記録を見ますと、最初の部落有林整理は、大正六年から始まって九年ごろまでかかったんですがな。時の郡長の強い要請でもあって、この村も部落有林整理の・・・
第181話
「部落有林整理の顛末」その二
- 昭和七年のことですな。村民大会という、これはまた奥明方始まって以来の騒動が起きたんです。その時、わしは公民権ができた年でなかったかと思うんですが・・・
第182話
「昔のこと」
- 昔は、山へ行くに、やかんがのうてな。茶釜でお茶を煮てなァササエっていう竹の筒に入れてったんやんな。明治も十年より前の話や。それから土瓶ができて、二升ほど・・・
第183話
「さしてもらえなんだ級長」
- 苦労話か。苦労話は恥ずかしいな。学校は、下家のとこで、中原先生の時やわいな。助教が東の孫左衛門さで八幡の高等科を卒業してな、教えとくれたんや。貧乏で・・・
第184話
「家内とはたった十三年」
- アゼチのオジイも十七の年オットウに別れて、十六の師走、嫁さもらったってな。そういう難儀をした経験があるで、お前も嫁さをもらえって言わっせるんやんな。わしゃ・・・
第185話
「家谷から日出雲へ」
- わたしはね、兵庫県で生まれて、大阪で材木屋を覚えて、変ないきがかりで七年に岐阜へ来たわけですね。わたしが大阪で買っとりました森平という問屋が、昭和七年の・・・
第186話
「日出雲の開発」
- 日出雲の山を買って、わたしの目的は、木のある三十五町歩だけで、そこまで道をつけて、下の製材所へ持っていくことですね。それでね、檜をどんどん切った・・・
第187話
「奥長尾での八十年」
- わしは、身上持つに遅かったで一番上が四十の年の子やんな。三十五、六までは、馬が好きで、明方でも大きいこた負けん馬を飼ったこともあるわいな。身上・・・
第188話
「糸引きの唄」その一
- わしらは、三つ子なんやで。男一人はじっき死にましたそうな。男の子とわしと六年まで出ると、下のこどもが二人出るやろうな。あの時分では、一軒で四人も・・・
第189話
「糸引きの唄」その二
- 甚四郎さに三年おって、ちいと遠いとこへ行ってみたいような気がしたもんで、気良の鷲見さんの製糸へ、五年行きました。休みには、奥長尾の峠を越いてやー・・・
第190話
「寒水の領家」
- ここを領家というがな。訳のことはよう知らんが、いつやら五来博士がござった時に、これは珍しい、やたらない家号やって言われたがな。なんでも、京都の方にも・・・
第209話
「長尾の比丘尼塚」
- 畑佐鉱山が七番鋪を掘っとる時分やったな。わしは、原庄次郎の若の仕事で、クラ桐ヘバン取りに行っとってな、怪我して、片足になってまったんや。十九の歳やったな・・・
第210話
「店町縄文人のくらし」その一
- 店町の住居跡から見つかったものというと、とても渦足に形を作ることはできませんが、おびただしい数の焼き物のかけらと、手頃な川原石や堅い燧石、それに近辺では・・・
第211話
「店町縄文人のくらし」その二
- 石の道具の方は、焼き物と違って、形がはっきりしているので、わかり易くて助かりました。石の道具は、何十万年も前の猿人といわれるような、人類の祖先も使った・・・
第212話
「浄福寺のアイス」
- 真宗西派、竹林山浄福寺の先祖は、九洲臼杵熊崎の郷の守護か地頭であったらしい。たまたま隣国との境界の争いに負けて、永仁三年(一、二九五)八月、家臣一族十人ばかりを従えて・・・
第213話
「蓮浄寺と長光寺」
- 真宗西派、長谷山蓮浄寺の本尊、方便法身尊像の裏書には、明応九年(一、五00)白川照蓮寺門徒気良庄西保長尾、願主善正とあって、蓮浄寺縁起の模様をうかがうことができる・・・
第215話
「劉太壕の夢」
- 昭和十四年の九月やな。わたしが満洲視察団に加わったのは。この村からは、助役の高田晴之進氏と村会議員でわたしと、もう一人、細川保美氏と三人やった。その時の団長が・・・
第216話
「馬から牛へ」
- こんなことは、話になるかどうやわからんが、わしゃ、馬を飼っとったことがあるんやんな。それは、気良の神田太治郎さんとこでひとなった当歳で、布平の品評会で優勝してな・・・
第217話
「大正九年兵」
- 今度、廃校になった気良の学校の落成式ってことで、わしら、クラブヘ寄ってな、餅つきの段取りやなんしょおったら、そこへ召集がきたんやで。金松つぁんと秀次郎さとわし・・・
第220話
「海人草の匂い」
- この四月、小学校が統合されて、三つの学校が一世紀に余る、長い歴史を閉じた。先ごろ、然るべき記念物があれば、この際、博物館に移したいという思いにかられて、原課長を・・・
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